わたべめぐみさんの仕事「Anesthesia」(木内達朗)

今回僕が紹介するのはわたべめぐみさんのお仕事、ART-SCHOOL・10th Anniversary mini album 「Anesthesia」ポニーキャニオン・ジャケット、ブックレット用イラストレーションです。
わたべさんは2008年に、ペーターズギャラリーコンペ峰岸達賞を受賞し、その湿度の高い独特の世界観に度々注目してきました。
ヨーロッパの最果ての地のような薄暗い森に佇む少女達や動物、楽しげなはずのサーカス団の飾りや喧騒も彼女の手にかかると悲しみを持って表現されます。人物の表現も独特で、オフィーリアのように生きているのに死んでいる、青白い肌にもかかわらずやけに赤い唇や頬が特徴的です。
このブックレットの表紙も構図的に素晴らしいのですが、僕は最後のページ、少年少女が手を繋ぎ、見上げた背景に複雑な枯れ木が丁寧に描かれてるのが個人的に気に入っています。木々の合間にみえる薄暗い空のグラデーションも丁寧に描いている。
ここ数年、わたべさんは文芸の方へも仕事の幅を拡げてきました。わたべさんの作品においては、暗めではあるけれど調和のとれた配色が特に素晴らしいと思うのですが、そういうカラーの世界とは違ってモノクロだけで描き出す挿絵の仕事に葛藤はあったでしょうか。最果ての地やオフィーリアといった空想の世界とは異なり、日本のサラリーマンの日常、男女間や親子関係、ビジネス物などその間には大きな壁を感じます。けれど、複数の小説誌から毎月定期的に依頼や連載があるということはわたべさんのフィルターを通して生々しい日常を描くということに編集部や作家の信頼を勝ち得てるのでしょう。
僕自身が原点としているモノクロ文芸挿絵の仕事から出発したように、わたべさんも今の経過をたどって今後どのようなお仕事を展開されるのか大変楽しみにしています。
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ARCHIVES
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2014.07.11歌川国芳さんの仕事「忠臣貞婦 伊呂波文庫」(熊井正)
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2015.10.15丹下京子さんの仕事「怒り始めた娘たち」(いぬんこ)
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2014.12.16小池ふみさんの仕事「ワシントンポスト紙表紙」と「オールドフェイスフルショップディスプレイ」(井筒啓之)
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2015.11.09DAN WOODGERさんの仕事「LODOWN MAGAZINE ISSUE #87」(土谷尚武)
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2014.09.20小林泰彦さんの仕事、イラストルポ(小池アミイゴ)
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2014.11.28遠藤美香さんの仕事「人生は彼女の腹筋」(村田善子)
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2014.08.19タケウマさんの仕事「RED」(木内達朗)
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2016.07.20祖田雅弘さんの仕事「鉄道のイラストレーション」(木内達朗)
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2015.05.05水野健一郎さんの仕事と参加展覧会「アウターサイド」(都築潤)
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2014.06.01寺門縁さんの仕事 Work of Yukari Terakado(井筒啓之)
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2014.05.22藤田美菜子さんの仕事「マカロンと金平糖」(村田善子)
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2014.09.01田中英樹さんの仕事「GRANROOF」他(都築潤)
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2014.05.01安西水丸さんの絵本「がたんごとん がたんごとん ざぶん ざぶん」(小池アミイゴ)
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2014.02.17A.R.ペンクさんの仕事「A.R. PENCK, Me in Germany」(熊井正)
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2013.12.21IC4DESIGNさんのお仕事「NATIONAL TRAIN DAY」(井筒啓之)
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2013.06.17牡丹靖佳さんの仕事「たまのりひめ」(村田善子)
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2013.11.01岸野真生子さんの仕事「文化学園大学の広告」(小池アミイゴ)
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2013.09.08Cato Friendの仕事(高橋キンタロー)
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2013.12.02波多野光さんの仕事「果物のごはん、果物のおかず」(村田善子)
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2013.11.25師岡とおるさんの仕事「痴漢撲滅ポスター」(都築潤)
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2013.09.28山口洋佑さんの仕事「KBF/ KBF+」(木内達朗)
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2013.08.05安西水丸さんの仕事「POPEYE 2013 AUGUST」(熊井正)
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2013.07.17ミロコマチコさんの仕事「ホロホロチョウのよる」(大久保厚子)
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2013.07.01オザワミカさんの仕事「なんかいる」井筒啓之
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2013.06.01佐竹政夫さんの仕事「ライアンの代価」(小池アミイゴ)
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2013.05.14都築まゆ美さんの仕事「最後の贈り物」(木内達朗)