COLUMN

この仕事、好きだなぁ

2014.05.01

安西水丸さんの絵本「がたんごとん がたんごとん ざぶん ざぶん」(小池アミイゴ)

「がたん ごとん」「がたん ごとん」「ざぶん ざぶん」

先日行った福岡県の海沿いを走るローカル線の中で聴こえてきた

かわいらしい声。



目の前のシートでお母さんに連れられたふたりの小さな男の子が

海に向ってつぶやいていました。


もしくは3月の終わりのころ。

カミサンと安西水丸さんの話しをした次の日、

息子(4さい)がいきなり

「あんざいみずまるさんが、つぎの日ようびにあそびにきてくれるって言ったよ」

なんて言いはじめたのでビックリ。


さらには水丸さん作(もしくは作画)の絵本の名前を連呼

「がたん ごとん がたん ごとん」

「がたん ごとん がたん ごとん ざぶん ざぶん」

「クッキーのぼうしやさん」

「クッキーのおべんとうやさん」

「おばけのアイスクリームやさん」などなど


なんかおかしくて、ナミダが出てしまったな〜

安西水丸さん作のあかちゃん絵本

「がたんごとん がたんごとん ざぶん ざぶん」

(福音館書店刊“こどものとも012” 2010年8月号)は、

息子が一番最初に好きななった絵本。


カミサンが息子に読み聞かせしている風景から、

ひとりで読んでる今日まで、

「がたん ごとん がたん ごとん ざぶん ざぶん」と

家族の原風景にリズムを与え続けてくれています。


この期間、ボクも久しぶりに幼児向けの絵本の制作をしていたので、

この本から学んだこと、

いやいや、

この本から手にした「楽しさ」は計り知れず、

(そもそもボクの担当編集者から頂いた本だしね!)

すぐに1987年に出版された「がたん ごとん がたん ごとん」も購入しました。

2010年に「がたん ごとん がたん ごとん ざぶん ざぶん」が発刊された際、

“作者のことば”で水丸さんが語られていることは、


1987年に出された「がたん ごとん がたん ごとん」が

世代を超えて支持され、続編が望まれていることを知り、

続編の企画を、水丸さんとしては「稀な」ことだけど、

出版社に持ち込んだとのこと。


水丸さんが「ボクは世の中に必要とされる絵を描いてきたんですよ」と

語られているのを聴いたことあって、

この絵本も社会の必然の中で生み出されたものなんだなあ〜と。


今回このコラムを書くにあたり、

福音館の編集担当の Iさんにお話をうかがうことにしました。


このストーリーは、絵と共にほぼ完成形で持ち込まれたとのこと。

その後、編集とのコミュニケーションを重ね、

終盤にあった「しゅうてんのかいすいよくじょうです」というテキストを、

前作と同じく「しゅうてんでーす」に変えたたり、

キャラクターの一部も、より赤ちゃんになじみ深いものに変えたりしたそうです。


残念ながら「がたん ごとん がたん ごとん」のご担当者は退職され、

1987年当時のことを詳しく知ることは出来ませんでしたが、


「私のような経験の浅い編集者にも、水丸さんは真摯に、謙虚に耳を傾けてくださいました」と

担当のIさんが語ってくださったように、

豊かなコミュニケーションから生まれた幸せな絵本なんだと思いました。


イラストレーターと絵本作家との間で線が引かれているとしたら、

水丸さんはそのボーダーをひょいと飛び越える力があったように思います。


それはやはり、

いつも世の中が必要とする絵を描いて来たってことなんじゃないかと。

(「世の中」は「編集者」や「デザイナー」に置きかけてもいいかな)


「雑誌のちょっとしたカットなんかを描くのも好き」

「イラストレーターは街の定食屋であってもらいたい」

「先生と呼ばれるより、絵を描いて生活してもらいたいですね」などなど、

ここ1年で耳にした水丸さんの言葉は、

あかちゃん向けの絵本の中からも、確かに聴こえてくるものでありました。


あらためて「がたん ごとん がたん ごとん ざぶん ざぶん」

すきだな〜!


というか、

これが好きでないとしたら、

自分史を否定することになってしまう。


ボクもこういうもの

創らねばだー

ところで息子よ!

「水丸さんが次の日ようびに遊びにきてくれる」なんて、

いつどこでそんな約束したんだ??息子よ、、


振り返れば、

ウォルト・ディズニーや手塚治虫、やなせたかしなどという人より先に

息子が憶えた人の名は「あんざいみずまるさん」だ!


ボクはシンプルにして軽快な あかちゃん絵本に

イラストレーションのヨロコビだけでなく、

社会の中で機能する絵の「凄み」なんてものさえ

教えてもらっちゃったようです。

PEACE!!

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