Toru Kageyama
影山 徹

ジムグリ

ジムグリ 飴村行 著 モグラだ、と博人は思った。思った途端拳銃を掴んで立ち上がった。予想外の事態に脳内が激しく混乱したが自分に危機が迫っていることは理解できた。そのため反射的に武器を持って自衛手段をとっていた。博人は右手で拳銃を握り、左手でゆっくりと安全装置を外した。それは旧陸軍の九四式自動拳銃を改良したシデン式自動拳銃と呼ばれるもので、モグラ兵士の装備品だった。勿論心当たりはあった。美佐だった。しかし夕暮れ時の浅い時間帯にモグラが地上に出てくるなど通常ではあり得ないことだった。なぜだ?博人は激しく混乱しながらも必死でその理由をさぐり、十秒ほどである仮説を思いついた。

クライアント名 : 集英社

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