COLUMN
03

この仕事、好きだなぁ

2013.11.01

岸野真生子さんの仕事「文化学園大学の広告」(小池アミイゴ)

その女性の後ろ姿に出会ったのは、新宿駅南口を歩いている時。

これ誰が描いたんだろう?って、電光掲示板にかじりついたボク。


エレガント、しかし、どこか不安げな後ろ姿の女性。


コピーには後から気がつく。


「つくりたいものがある。」


なんかいいなあ〜、ぐっとくるな〜。

この学校に入って、服と仲間を作って、こんなランウエイの風景に出会いたい。

ボクが若ければそう感じただろね。


それにしたってこれは誰が描いたんだろうか?

もしかしたら、今や有名になったフッションデザイナーさんの

古いデザイン画だったりするかな?などと想像が働く。


そしてボクはもうひとつの「つくる」風景に気がつく。

伊坂芳太郎さん??

じゃないよな、


岸野真生子さん!?

きっとそうだ。


匿名性に包まれながらも強い個性を放つ儚げな女の子。


そして「つくる人をつくる。」というコピー


うわー、とってもリアルでエレガントな広告じゃん!って、

この仕事、好きだなあ〜!


調べてみると、岸野真生子さんは文化学園大学(当時は文化女子)の卒業生とのこと。

この広告の掲示期間はすでに過ぎていますが、文化学園大学のご担当者に連絡をとり、

このビジュアルが生まれた背景をうかがってみました。


=広告にイラストレーションを使用し、岸野さんを選んだ理由=

大学の広告=キャンパスの写真や学生の顔、というセオリー通りのビジュアルでは

JR新宿駅構内という場所柄から到底突出できないという考え。

当初、本物のファッションショーの写真を使うことを考えたが、

岸野さんならばイラストレーションで表現できると確信し、依頼。

併せて、イラストレーターとして活躍している卒業生がいるということを

広くアピールできる機会にもなると考えたとのこと。


=岸野さんにオーダーしたこと=

広告出稿面が10面ということで、複数のパターンの必要を考え、

ファッションショー衣装の「完成品」と「製作中」という2パターンを依頼。

「岸野さん自身が在学中に経験した想いを、この2枚で見せて欲しい」と伝えたとのこと。

何日も徹夜で衣装を仕上げた思い出。

ショーの本番、衣装を纏ったモデルがステージへ上がっていくのを見つめる裏方の想い。

4年間、その辛さもその倍の喜びも経験してきた岸野さんだからこそ描いてもらえるはず、

と託したそうです。


=コピーとイラストレーションではどちらが先行していたのか?=

もともと「文化をつくる。」というのが以前から文化学園大学のキーコピーでしたが、

今回はビジュアルのイメージを先行させ、岸野さんに上記の2パターンを依頼。

並行して広告代理店からコピーの提案があり(ビジュアルイメージは伝え済み)、

出てきた複数のコピーの中から2点を選び、最終的にイラストと合わせたとのこと。


・ファッションイラストレーションに望むこと

大学内でも毎年『FIEFashion Illustration Exhibition)』が開催されており、

ファッションデザイン画の授業の域を超えたものに多く出会うそうです。

「時代」や「情報」、はたまた「気分」を受け手に伝えるという

メディアの役割を十分に担ったアートであると思いますので、

広告や出版などで活躍されるファッションイラストレーターが

増えていくことはとても楽しみであります。とのこと。


*入試広報課のNさん、ご協力ありがとうございました。


愛があるな〜

そして、このモノクロームの風景を鮮やかに染めあげるのは、

この学校に通う1人ひとりなんだね!


ファッションイラストレーションに対し思うこと。


「なぜこのシチュエーションでこの服を着るのか」

「なぜこの服はこんな構造でこんなカタチをしてる必然があるのか」


そんなテクニカルな部分にまで迫った上で

スマートに描けているファッションイラストレーションは、

写真以上に「モード」を伝える力があると考えています。


しかし、日本ではそこまで出来る現場が失われているなあ〜と。


この広告に心を動かされた人がこの学校に通い、服やモードを知り、

いつか編集者やデザイナーに「使いたい!」と思わせる

ファッションイラストレーションが生まれる可能性もありますね!


そうだ、そういえば、

ボクも「セツは自由の学校です」というコピーに添えられた

長沢節さんが描くモノクロームの儚げな女性に心を動かされ、

セツモードセミナーに入学したんだ。


そして今、こんな広告に出会うことで、

ぼくの「つくる」ハートにも火がつくのだ。


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