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2024.01.26

舟橋全二さんを偲んで

TISに長年在籍されておられた舟橋全二さんが、2023年の12月19日にご病気のためお亡くなりになられたこと、ご家族様よりご報告がございました。
享年80歳。
自由な線で形取られたシンプルな造形によるイラストレーションは、社会のあらゆる場面で活躍し、ひとつの企業のイメージを決定づける力強さも持ったイラストレーターでありました。
TISには1988年8月29日~2021年2月28日までご在籍頂き、またイラストレーション青山塾で長らく講師を務めてこられた舟橋さんは、公平で温かな振る舞いの元、後進の育成にもご尽力されて来られました。
私のような者にも気軽に声をかけて下さったジェントルなお姿に、もう会えないと思うと残念でなりません。
舟橋さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

理事長 小池アミイゴ

 

 

 

 

 

第11回TIS公募 授賞式にて(2013年)

 

舟橋さんのTIS公募トロフィー制作

TIS公募では受賞者にお贈りするトロフィーを会員の方に制作していただいています。
委員の話し合いでカラフルでお洒落なオブジェを作られている舟橋さんに是非ともお願いしたいとなり、第11回から14回までの4年間担当していただきました。
公募スタート時は大賞にだけ用意されていたトロフィーですが、舟橋さんから入賞者全員に制作していただくことになリ、大変な作業を快くお受けくださいました。

出来上がってきたものは想像以上に素晴らしく、私たちも欲しくなってしまうくらいです。 金属板のオブジェは一つ一つの色とフォルムが美しく、個別に飾っても全てを一緒に並べても違った味わいが出てうっとりでした。
公募展開催中は会場に展示させていただき後日受賞者の元へお届けなので、全てが揃ってみられるのは会期中だけと思うと残念な思いもありました。

舟橋さんは、ハンサムでほっそりとなさってモデルのようなお姿。でもお話し始めるととろける笑顔になられて、いつもあたたかいお心を私たち若者に向けてくださいました。会場でも受賞者に優しくお話しくださっていたのを思い出します。
制作について語られる時は、本当に愛溢れ少年のように楽しそうになさって、トロフィー制作についてコメントをいただいた中にそんな舟橋さんがいっぱいです。
 

 

第11回TIS公募 トロフィー(2012年)

 

 

第12回・2014年公募オープニングパーティー時の舟橋全二さんコメント



第12回TIS公募展、受賞者の方々おめでとうございます。昨年度の受賞トロフィーに次いで、今回もまたトロフィー制作を依頼されました。これらがどうやって出来上がるのか、その行程を会場で少し話をして欲しいとの事でしたが、あいにく僕は当日出席できません。文章で事務局側にFAXでお送りし、会場で読んでもらうことになりました。

今回も前回のように新作をデザインするつもりが、時間が足りなく、今年の5月に青山のスペース・ユイでやりました金属オブジェでの僕の個展の作品の中から何点かを選び使用いたしました。金属板でのオブジェも2年おきにここ20年の間に10回程個展をやっております。日頃は紙を切っての切り絵でのイラストレーションを続けていますが、これらも形の平面性という事では同じ世界です。

まず、紙を切って形を作ります。なるべく単純で、簡単な折り曲げだけで立つようにしています。そのため、厚紙でもう一度カットし、立つかどうか、どこをどう折り曲げるかを決めます。溶接の方法は使わず、あくまでも一枚の平面から折り曲げるだけで立つようにしています。特に今回のものは、まず一ケ所または二ケ所を曲げた単純なもので平面性にこだわっています。平面から立ちあがった時に生まれるものとしての存在感が好きなのです。

これらを作ってもらっている所は、荒川区の西日暮里にある「斉藤照明」という小さな町工場(こうば)で、高齢の職人さん達10人くらいの所でして、僕もそこで作業していると、もう何十年もそこで働いているような気になってきます。工場(こうば)に着くとまず家から持参の汚い古びた服に着替えます。

さてその行程ですが、まず金属板をカットするための、それらの形をアウトラインどりをします。細い正確なラインどりです。その作業は僕は苦手なので、知り合いのデザイナーにコンピューターでやってもらってます。その線どりのデータを工場(こうば)にある大きなカットする機械のコンピューターに入力する。それにそってカットされる。次に折り曲げ部分の位置と角度を指定し、そりの大きな曲げ専用の機械で曲げる。それらの作業は職人さんと一緒にたちあっての作業。時には間違って反対方向に曲げられたりもします。するとカットからのやり直しもしばしば。ちなみに今回金賞のもの、頭の鳥の羽根の曲げ部分は、自分の手で少しずつ曲げてカーブをつけました。次に各種のやすりで、手で一点一点形の修正の作業。エッジの部分、とんがった部分を少し角をまるめる。その作業が大変で、工場(こうば)の床に座り込んで一点ずつやすりがけ。それらが終わると色での塗装。別の工場(こうば)での焼き付け塗装。同じ色での二回の吹きつけ塗装。そして乾いた色のチェック。次に最後の文字を入れる、のはまた別の所。印刷ではなく文字を浅く掘り、そこに文字色を注入。以上完成。

簡単なようですが、かなりの人手とプロセスがあり、全て一人で出来るイラストレーションの世界とは違います。でも、出来上がった物を初めて手にした時の嬉しさで、今だに続けている次第です。受賞された方、気に入ってくれると嬉しいです。
 
舟橋全二

 

 

 

 

 

 

第14回TIS公募 トロフィー(2016年)

 


大先輩とのお別れは心にぽっかり穴が空き寂しく切ない思いですが、沢山のものをいただいた日々、ありがとうございました、感謝の気持ちでいっぱいです。 その一つ一つはこれからも心に確かに活きて共にいてくださるはず。いただいたものを大切に皆で育んでゆければと思います。

 

 

 

山崎綾子(公募委員会)