東京イラストレーターズ・ソサエティ - Tokyo Illustrators Society

丹下京子さんの仕事「怒り始めた娘たち」(いぬんこ)

2015.10.15

  • この仕事、好きだなぁ

丹下京子 : カバー表

丹下さんの線

思ったより、しずかに怒ってたんだな…。

久々に会ったこの娘は、それでもやはり小さな肩を震わせて

怒りの感情をためていました。


ところで、太った人と久々に会って「ちょっと痩せた?」と思うのは、

「太ってる」という印象が時間の中で増幅するからだと聞いたことがあります。

そう、私よくそう言われるんですよ…それはいいとして。


丹下さんが描いたこの娘も、想像の中でその印象がめらめらと育つ程に

とても強い存在感を残していました。

怒りの芯のような赤い髪飾りから、入り乱れた悩みを思わせる編み込みに、

ひんやりと冷めた肌の質感、そして息苦しいまでにヒリヒリとした空気感。

丹下さんがどれだけ集中して線をひいているかが伝わってきます。

個人的な見方でいうと、線は絵描きの声のように感じます。

何かの意味を作っていく言葉のかけらのような。

丹下さんの線は、物凄く筆圧が高く生き物のように念がこもっていて

押し殺した叫びのような声が、見る者に強く届くのです。

と、ここまで書いて、丹下さんにインタビューしてみました。


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ーまず、この装画を描かれるにあたって

受注の経緯を教えて下さい。

丹下さん(以下敬称略)/
デザイナーは新潮社装幀室の望月玲子さんです。

お母さんとの関係に悩んで背中で怒りや悲しさを

感じる娘の絵とゆう発注を受けました。

とにかく時間がなかったのですが

表紙のイメージは固まっていたので進めやすかったです。

シンプルな線で表情や感情のうねりみたいなものを

感じさせられたらいいなと 話しました。

ー実際の作業に入って、苦労した点や留意した点などあれば…

丹下/
この後ろを向いた女性の、 悲しさとか 怒りとか空しさとか…

いろんな表情が 想像出来るような後ろ姿に見えるように

ちょっとした首の傾きとか手の位置、腰のラインとか

振り向き具合とか、これでもいろいろ気にして描きました。

線画で修正しにくいので、数十枚描いてその中から選びました。

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やはり数十枚も!

そして発注のイメージを正確に、そしてそれ以上に伝わっております。

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ー装画の他にもたくさんのお仕事されてますが、

イラストレーションについて丹下さんなりの考えなどありますか?

丹下/
絵を描く上で気をつけているのは、

いつも初心者のような気持ちで描くこと。

慣れで描かないこと。

仕事で気をつけているのは発注された内容や意図は正しく把握して

その答えをこちらからちゃんと絵で提案する事。ラフの段階で

あいまいなまま絶対仕事を進めない事、でしょうか。あたりまえか。

これからは出版業界もどんどん変わっていくし、イラストレーターが

どういう形でどんな分野で関わっていけるか、ちゃんと自分自身で

考えていかないと いつか失業するな、といつも肝に銘じております。


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イラストレーターというのは、まず「蕎麦」の注文に当然ですが、

きちんと「蕎麦」を出せる能力が必要です。

ウチの暖簾をくぐったお客さんが求めている味。

つい惰性で甘えがちな手ぐせに頼らず、常にまっさらな気持ちで線を引く。

「あたりまえ」のように旨い絵を出し続けることの厳しさを知っている丹下さん。

そんな仕事ぶりを拝見して、いつも背筋が伸びる思いがします。


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プレイバック16の不良の怖さとおかしさ…丹下京子 : 第2話2012年4月号

講談社出版文化賞さしえ賞を受賞した「赤ヘル1975」は

モノクロなのに赤の躍動感と歓声が聞こえて、絵を流してみてるだけで映画のように感動します。

丹下京子 : 第13話 2013.1月号扉

なみだの穴」の装画の、

青臭い涙も汗も想いも大量に塗り重なった海の透明感。
丹下京子 : 原画

オリジナル作品の『猫展 2013』でも ほぼ線だけで

猫と人物の関係性から人物の性格や人生まで描かれているように感じます。

この戸惑いつつ鼻先で匂う猫ちゃんの感じとかたまりません。
丹下京子 : 2014猫展

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ー今後やりたいお仕事、また得意な方面などありますか?

丹下/
好きな仕事はやはり装幀の仕事です。苦しいと楽しいが半々です。

一番難しいのは挿し絵の仕事。本当に苦しいですが、やりがいがあります。

やりすいのは、主婦なので、生活まわりの仕事かな。日常にリアルな材料が

たくさんあるので。

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心に直に引かれるように、ずっと残る丹下さんの線。

尊敬するイラストレーターの一人として、ファンとして、

その線が向かっていく先を見続けたいです。


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