東京イラストレーターズ・ソサエティ - Tokyo Illustrators Society

安西水丸さんの仕事「POPEYE 2013 AUGUST」(熊井正)

2013.08.05

  • この仕事、好きだなぁ

竹ノ塚の友達の家に行くために入谷から日比谷線に乗り、三ノ輪を過ぎ南千住に向かう途中、地下鉄がちょうど地下から地上へ出るとスッキリと光が車内を明るくしたときだった。座席からふと目をやると、その車内吊り広告が目に留まった。


雑誌「POPEYE」の広告だった。白とスカイブルーのバックが爽やかで、レモンの黄色が全体をひきしめ、いっそう爽やかな印象を高めている。この雑誌の創刊号を中学のころから見てきた私にとって、スミ一色で刷られたロゴは、その印象の強さとともに懐かしさも感じるデザインだ。


この広告に出会うまで、このコラムのことをずっと考えていた。いったいどんなイラストレーションをピックアップすればいいんだろうって。そして、自分が好きなピックアップしたいイラストレーションは、どんなものだろうかと、ぼんやりと考え続けていた。そういう時きまって想い起こすことは、70年代から80年代の小、中、高校生のころに目にしてきたイラストレーションのことだった。けれどこのコラムでちょっと以前の作品を紹介していいだろうか、やっぱり今のものを取り上げたほうがいいのかと、ちょっと悩んでいた。けれどもそんな時この広告に出会い思った。そうこんな感じ(*注1)が好きなんだと。


車内吊りを見たあとコンビニへ行った。最近あまり雑誌を見たことがなかったので、久しぶりに「POPEYE」も見た。こんなに大きな判型になっていたのかと少し驚き、そしてこの大きな判型のイラストレーションもいいなぁと思った。そんな雑誌をしばらく見ていたら、ふと思った。「青の時代」(*2)を見てみようと。


家の本棚の一つは、大切な本をいつでもすぐに見られるように入れてある。「青の時代」を久しぶりに本棚から取り出しパラパラとページをめくった。なぜか「後書き」を読み、「解説」を読み、そして最初のページに戻り読み始めた。7月の中旬とは思えないような猛暑日。こんな日は、室温が37度、38度にもなるエアコンのない自宅の三階で、最後まで「青の時代」を読んだ。やっぱりすごい。久しぶりに読み返してみると以前は漠然と感じ受け止めていたものの中身が少しは、解ったような気がした。


私は、あまりマンガには、興味を惹かれない。それでも、本棚に数冊のマンガは、持っている。その中で「青の時代」は、自分にとって特別だ。マンガは、普通一コマ一コマがつながりそして全体で物語を作っていくもの。もちろん「青の時代」も普通のマンガのように全体で物語を作っている。けれどもそれとは別に一コマ一コマが完結した一枚の絵のように見えるのだ。そして完結した一コマずつの連なりは、完結している絵が隣り合うことで感じられる分断から、余白のような間のような感覚があり、そこに全体の物語とはちがった別のイメージが浮かび上がっているような気がするのだ。


そして完結した、絵と絵と間との関係性は、一枚のイラストレーションの中にも立ち現れる。バックの白、スカイブルー、レモンの黄色、その他のモチーフ、完結しているモチーフが隣り合うことで感じられる、余白のような間のような感覚、それらの中に独自の空間をもったもう一つのイメージが浮かび上がってくるように感じられるのです。



*注1「こんな感じ」とはこんな感じだ。シンプルで美しく長く見つめさせる仕掛けがあり、デザインされていて十分に情報が整理されているもの、そんな感じが好きなんだ。


*注2「青の時代」は、安西水丸さんの雑誌ガロに連載されていたマンガをまとめた単行本。オリジナルは1980年に青林堂から出版された青い箱入りの本。残念ながら私が持っているのは、1987年の新装版だ。

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